BACCAIng(ばっかいんぐ)は富山県と公益財団法人富山県新世紀産業機構がサーキュラーエコノミー(循環経済)の構築の一環として取り組むアップサイクル創出プロジェクトです。

自然物の唯一性を魅力的に価値化し、循環させる

企業視察

株式会社島田木材

木材の価値を高め、新しい林業、新しいものづくりを模索

令和7年度最初のばっかいんぐカンファレンスが実施されました。フィールドワークでお訪ねしたのは南砺市の株式会社島田木材です。林業は50年、100年という長いサイクルで地域の山や森林と向き合い、守り育てる仕事ですが、近年は温暖化対策における森林生態系の多面的な機能が注目され、同時に一方ではビジネスとしての効率化や高機能化、労働環境の改善が求められるなど、時代の変化と共に更新を余儀なくされている業界でもあります。同社は森林の管理育成、丸太生産、山林の受託管理を手がけるだけでなく、地域の木工職人と共にウィスキー熟成樽の製造に着手するなど、従来の林業の枠に留まらない活動を展開されています。今回のフィールドワークでは、この樽工房と木材伐採の現場を見学。また古くから「木彫刻のまち」として知られる同社近隣の井波地区をご案内いただき、地域の歴史や文化に触れると共に、木材の活用や現状課題について多くの学びを得ました。

株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材

企業情報

企業名
株式会社島田木材
ウェブサイト
https://shimamoku.co.jp
所在地
〒932-0231 富⼭県南砺市⼭⾒1755[MAP]

創造会議

株式会社島田木材

午後の創造会議では、島田木材の島田優平社長による事業紹介に続き、フィールドワークで得られた情報・知見をメンバーで共有。「木材の魅力/価値」「解決すべき課題」「富山らしさ」「アップサイクルの可能性」という4つ観点でディスカッションを行いました。アップサイクルにおいて、木材という自然物の端材・廃材のポテンシャルの高さが語られた一方、同じものがひとつとしてないことによる再製品化と量産の難しさなどについてもさまざまな意見や感想が交わされました。

主なディスカッション

株式会社島田木材フィールドワークから

  • ひとつひとつに個性があってオンリーワン!
  • 木の生育場所の痕跡、古材としての来歴も魅力
  • 木肌を削れば“新品”、香りもリフレッシュ!
  • 剥がされた樹皮にも有機的な美しさがある
  • ミズナラを“食材”として商品開発できないか
  • 木は他の素材を引き立てる
  • 木に備わった天然の抗菌力や消臭力
株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材
株式会社島田木材

第5回創造会議のまとめ

木材の魅力/価値

  • ・木自体の香りのみならず、木が育った場所の土や枯れた枝の匂い、空気の匂いも含めた土壌とつながる匂いを価値化できないか。
  • ・同じものがないという当たり前のことが無作為の美として価値を持つ。木の出自の情報と共にそれらをデジタルデータ化できないか。
  • ・ウィスキーだけでなく、実はタバスコが樽で醸成されるように、“熟成装置としての樽”を見直すことで木の可能性が広がるのではないか。

解決すべき課題(社会/業界)

  • ・生産者側は生活者のニーズや価値観の変化がつかめず、また生活者も木と出会う機会が少ない。つくる人と使いたい人のマッチングが必要。
  • ・木は加工性の高さや経年変化など魅力が多いが個体差が大きく、工業製品としてはプラスチックなどに比べて手入れも不可欠。自然素材への知識と理解を市場に促す必要がある。

富山らしさ

  • ・豊富な広葉樹資源、木加工の伝統技能、全国三位の植生自然度*をベースに、ものづくり県、富山で産生されるさまざまな端材廃材と木を組み合わせることで独自のアップサイクルが考えられそう。
    植生自然度*:植物社会学的な観点から、群落の自然性がどの程度残されているかを示す一つの指標
  • ・砺波平野の美しい散居村の景観をつくり出す“かいにょ”(屋敷林)に代表されるような生活文化をインストールすることで、富山らしいアップサイクルに。

アップサイクルの可能性

  • ・土壌の香り含め、より広義の木の香りを有効活用できないか。
  • ・ウィスキー樽や燻製用木材チップのように、食領域で木の機能/効能をより積極活用できないか。
  • ・昨今は“食べる木”の可能性が模索されていることもあり、食材としての木の活用研究はアップサイクルのアプローチとしても注目できそう。